2012年5月18日金曜日

01. 肥満とメタボリックシンドローム-日本生活習慣病予防協会-メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛連載


メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛連載

01. 肥満とメタボリックシンドローム

監修 井上修二(日本生活習慣病予防協会理事/桐生大学副学長・医療保健学部学部長)

肥満は生活習慣病の元


"小児の皮膚疾患

「肥満は生活習慣病の元」とよく言われます。実際に、肥満によって、さまざまな病気が起きてきます。例を挙げると、糖尿病や高脂血症(高コレステロール血症)、高血圧、痛風・高尿酸血症などなど。このような「生活習慣病」と呼ばれる病気の多くが肥満と関係しています。
 これらの病気は、血管の老化「動脈硬化」を速める原因です。言い換えると、これらの病気にかかると実際の年齢以上に血管が老化してしまい、からだの要所要所に血液が流れにくくなってくるということです。その結果、心筋梗塞や脳梗塞などの怖い病気になってしまう確率が高くなります。
*このページでは「糖尿病」という病名を、生活習慣病の一つである「2型糖尿病」の意味で用いています。

太っていなければ安心?


 では、太っていなければこういった病気を心配しなくても大丈夫なのかというと、そうとも言えません。外見からはそれほど太っているように見えない、標準的な体型の人でも、糖尿病や高脂血症、痛風・高尿酸血症だったり、心筋梗塞や脳梗塞になってしまう人もいます。なぜでしょうか?
 肥満には「皮下脂肪型肥満」と「内臓脂肪型肥満」という二つのタイプがあり、前に挙げたさまざまな生活習慣病の発病とより深い関係があるのは、後者の内臓脂肪型肥満です。皮下脂肪型肥満では、おなかの表面の皮下に脂肪が貯まるのに対して、内臓脂肪型肥満は、おなかの中の内臓の周囲に脂肪が溜まった状態なので、体型からはで太っているようには見えないことが少なくありません。ですから「太っていなければ安心」とは言えません。また、糖尿病や高脂血症、高血圧などの生活習慣病が、肥満とは別の原因で発病することもあります。

隠れ肥満もメタボリックシンドローム


新しい頭痛の救済額

 "隠れ肥満"という言葉をお聞きになったことがあるのではないかと思いますが、その"隠れ肥満"もまさに内臓脂肪型の肥満です。そして、この内臓脂肪型肥満が、最近マスコミなどで見聞きする機会が増えている「メタボリックシンドローム」の元凶なのです。
 メタボリックシンドロームの診断基準の一番初めに調べる項目が「ウエストサイズ(腹囲径)が男性85cm以上、女性90cm以」となっているのは、ウエストサイズを目安に、内臓脂肪が過剰に溜まっているかどうかを推定するためです。

過剰な内臓脂肪が諸悪の原因


 長い間、からだの脂肪はエネルギーを貯蓄するためにあるもので、それ以外にはとくに重要な働きをしているとは考えられていませんでした。しかし近年、脂肪細胞からはいくつかの重要な生理活性物質(アディポサイトカインといいます)が分泌されていて、からだの諸機能に大きな影響を及ぼしていることがわかってきました。
 内臓脂肪が過剰に溜まると、それらのサイトカインの分泌に異常が現れ、血糖値や血清脂質(中性脂肪など)、血圧が高くなりやすくなります。その結果、糖尿病や高脂血症、高血圧が起きてきます。また、血液を固まりやすくする――サラサラ血液をドロドロ血液にする――サイトカインも分泌されるので、血栓(血管内にできる血の塊)ができやすく、心筋梗塞や脳梗塞などの発作が起きやすくなります。

小さな悪者も群れをなすと手におえない



 メタボリックシンドロームとは、これらの複数の生活習慣病が、たまたま一人の人に同時に起こるのではなくて、過剰に溜まった内臓脂肪という上流に位置する一つの原因から、いくつもの病気が起きてくる状態です。
 注意すべきことは、それぞれの病気を単独でみると、すぐに治療が必要なほど悪い状態ではないことが多いという点です。'少し悪い'程度の病態なのに、それが複数寄り集まるため、血管に非常な負担がかかるのです。
 糖尿病や高脂血症や高血圧などを、それぞれ別の病気として治療する従来の考え型では、どの病気も'軽症だから'といって放置されてしまいかねません。そのような状態を放置せずに、しっかりと予防的な治療(食事、運動療法など)していく必要性がわかったため、メタボリックシントロームの診断基準が設けられたのです。

改善の指標は体重よりもウエストサイズ


 メタボリックシンドロームによる複数の生活習慣病を治療するには、原因のおおもとである内臓脂肪型肥満を解消することが第一です。このとき、必ずしも減量――体重を減らすこと――にこだわることはありません。
 もちろん、しっかり減量すると内臓脂肪は減少しますが、減量しなくても内臓脂肪が減ることがありす。内臓脂肪減少の目安となるのは、ウエストサイズです。逆に言うと、肥満のように見えなくてもウエストサイズが大きい場合(隠れ肥満の場合)は、内臓脂肪型肥満の可能性が高いので、ウエストサイズを減らす必要があります。

内臓脂肪を減らすには


 内臓脂肪は皮下脂肪に比べて、溜まりやすく減りやすいというと特徴があります。ですから、からだを少し多めに動かしてエネルギーを消費したり、食べすぎ飲み過ぎを少し控えて、からだに過剰なエネルギーが入らないように心掛ければ、体重そのものはそれほど減らなくても、内臓脂肪は割と良く減ってきます。

まずはウエストサイズ5センチ減少をめざす



 そして、内臓脂肪が減りウエストサイズが少しでも小さくなると、血糖値や血清脂質や血圧などの検査値が、目に見えて改善します。原因のおおもとから改善するのですから、当然と言えば当然ですね。治療開始に際しては、とりあえず、現在のウエストサイズを5センチ減らすことを目標にしましょう。
 次回は、『肥満とメタボリックシンドローム』のポイントをQ&A形式で解説します。

(2006年7月)



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