「よこはま ユース・ニューデール」の開始にあたって
100年に1度の未曾有の経済危機が叫ばれる中で、もともとニートやフリーターなど不安定就労層の多い「就職氷河期世代」(20代後半~30代)の若者の雇用危機や生活困窮が社会問題として大きくクローズアップされています。
ここ数年、横浜市でも、いわゆるニートやひきこもりと呼ばれる困難を抱える若者に対して、社会参加や経済的な自立を支援するための取り組みを進めてきました。すなわち、一昔前であれば、経済的に自立し、社会を支える側にいたはずの20代後半から30代前半の若者を、福祉サービスの対象として捉え、自治体としては、かなり踏みこんだ対応してきたわけです。それは、「ロスト・ジェネレーション」とも呼ばれる就職氷河期世代の若者たちの抱える課題(雇用や就労、結婚や子育て、経済的格差など )が複雑かつ深刻であるため、その影響が、この世代に留まるものではなく、私たちの社会の在り方の根本に関わる重要な政策テーマであるという認識があったからに他なりません。
実際に、この6月に発行された「横浜市民生活白書2009」においても、この10年間でかつてないほど市民全体の生活不安が拡大し、生活不満層が増加していること、その大きな原因の一つが、10代から30代の若年層の生活困難にあることが、各種統計データによって、明らかにされています。すなわち、 1995年以降の若者の失業率の上昇とアルバイトや派遣などの非正規雇用者の著しい増加、そして被保護率(生活保護)の極端な上昇と収入格差の広がりなど、この時代の若者が抱える困難さを示すデータを挙げだしたらきりが無いほどです。
代の急激な体重減少
そこに、今回の経済危機です。仮に戦後最悪とも言われる不況が長引いたとしたら、企業の新卒者への雇用意欲が減退し、高卒者や大卒者の就職率が、再び低下することは眼に見えています。ここで、国や自治体が有効な対応策を講じなければ、かつての「就職氷河期世代」がそうであったように、現在の 10代後半から20代前半の世代からも、不安定な就労環境の中で、働かざる得ない若者や、失業状態の長期化によって、就労意欲を失う若者が、続出することが予測できます。すなわち第2の「就職氷河期世代」が形成されてしまう。さらに、第1就職氷河期世代のニートやフリーター層においても、雇用情勢がますます厳しくなることで、仕事を通じて養われるはずの社会性や技能・能力が形成されないまま年齢を重ねて行く可能性が高くなる。そうなれば、若者全体で経済生産活動を担う人材が希薄化し、また貧困層が増えていく。その結果、待っているのは、私たちの社会全体の中長期的な衰退と崩壊ではないでしょうか。
今年度から私たち横浜市は、「若者の働くことの困難さを、ハマを元気にする力に変える」をテーマに、「� ��こはまユース・ニューデール」というムーブメントを興します。これは困難を抱える若者の潜在能力を様々な形で活かすことで、新たな雇用を創出し、地域社会を活性化し、都市環境を再生して行こうとするもの。すなわち、一人ひとりの若者を元気にすることで、彼らの力で、横浜という都市そのものを元気にする試みです。
この事業の「ニューデール」という名称は、1990年代後半にイギリスのブレア政権が若年や長期失業者の就労意欲や技能を高め、労働市場への参画を促すために展開した「ニューデール政策」と1930年代の世界恐慌の際に、アメリカのフランクリン・ルーズベルトが展開した「ニューデール政策」の双方から取っています。
疝痛の糞
イギリスのブレア政権の「ニューデール」は、若者一人、ひとりの状況に応じたきめの細かい就労支援を、国が音頭をとりながらも、ユースワーカーと呼ばれる専門家を中心にNPOや企業、学校教育機関、自治体が連携し、包括的に展開することで、成果を挙げたことが特徴です。
確かに一言で「若年無業者」と言っても、彼らの置かれている状況は様々です。したがって、その支援のあり方も、個々の若者の心身の状態や社会・経済状況に応じたものでなければ、十分な成果は挙がらないはずです。「よこはまユース・ニューデール」を支える主要事業の一つである「いつでも、どこでもサポートステーション」は、このような認識に立って、障害や疾患を抱えている可能� ��のある若者や女性のニート、学校中退者、生活保護世帯の若者、若年ホームレスなど、それぞれの若者の抱える困難さに応じた支援を展開して行こうとするもの。そのため「よこはま若者サポートステーション」のスタッフが、障害就労支援センターや、男女共同参画センター、高等、専門学校、区の生活保護担当など、テーマごとに各専門機関・団体の現場に赴き、支援プログラムを共同で開発・実践します。
ルーズベルトのニューデール政策の肝は、単に税金を通じて、公共事業を創出し、失業者を救済しようとしたことにあるのではなく、「テネシー川流域開発」に見られるように、地域の未利用の自然資源や社会資源を活かした総合的な地域開発を世界で初めて展開したことにあると言われています。すなわち、当時、ア� ��リカで最も荒廃していたと言われるテネシー川流域で、電力供給のためのダム開発に始まり、土壌の改良や肥料の生産、運河の開墾、植林など政府主導で多角的な事業を展開し、国土を開発再生することを目指したわけです。
不眠症の本当の治療法
ひるがえって、私たちがこれから展開しようという「よこはま ユース・ニューデール」の大きな柱の一つに「よこはま型若者自立塾の拡充」があります。これは、平成20年度に横浜の水源の森・道志村で、就労困難な若者たちと村民との協働で展開した植林や農業の補助、古民家の修繕など「若者自立塾 ジョブキャンプ」の活動プログラムを、21年度は、市域にまで広げて行こうというものです。
例えば、青葉区の野外活動施設を拠点として、周辺の谷戸環境の保全や農作業のお手伝いをする。また金沢区野島の青少年研修センターを拠点として、史跡や干潟・自然海浜の保全活動を展開する。さらに中区寿町でアートによる街の活性化と生活困難層の支援� �動を展開する。すなわち若者たちの共同生活を通じて、地域の自然資源や社会資源を掘り起こし、結びつけることで、地域を再生し、元気づけて行こうとするプログラムです。
そして、何よりも、ブレアやルーズベルトのニューデールが、政府の強力なリーダーシップで行われたものであるとするのならば、私たちは、ユース・ニューデールを企業やNPO、地域住民の方々など「民」との協働を中心に展開していきたいと考えています。そのためのメディアとなるのが「若者の働く・学ぶをみんなで創る」をテーマに立ち上げる「Hamatorium Cafe」とは、モラトリアム(社会的猶予期間)を否定するのではなく、肯定的に充実したモラトリアムを過ごしてもらいたい、という思いから生まれたネーミングです。同世代や大人たちの何気ない語り合いから生まれる「気づき」によって若者たちが成長していける。そんなゆるいカフェ的交流から若者の自� ��実現を後押ししていけるウェブ・サイトを、私たちはユースニューデールの一貫として立ち上げます。そして、このウェブサイトを通じて、「働く」ことや「学ぶ」ことに悩みや不安を抱える若者たち相互の語らいの場を設けたり、自宅にひきこもる若者たちに、NPOや教育機関のメッセージを届けたり、若い人材を求める企業と就労困難な若者とのマッチングを行います。
「よこはま ユース・ニューデール」の展開によって、どれだけ多くの悩みや不安を抱える若者たちを勇気づける事ができるのか、またそれによって、横浜という都市を元気づけることができるのかは、現時点では、全く未知数です。ただ、より多くの市民や企業がこのムーブメントに参加することによって、市民全体が抱える不安や不満が少しづつで� ��解消していくことを目指して、この事業を進めて行きたいと考えています。
「よこはま ユース・ニューデール」への皆さんのそれぞれの立場での参加をお待ちしています。
横浜市こども青少年局青少年育成課係長 関口昌幸
(2009.09.01)
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